「息が詰まる。どうしようもなかった。」
バーのマスターダルヤ
「最近よく来るね。しかも大体息の詰まった顔をしてる。飲むかい?」
「・・ありがとう」
ダルヤ「訳ありかな。ゆっくりしていきな。騒がしいけどな。」
ほぼ24時間あいているバー「KUJIRAYA」
(ほぼ24時間というのはマスターの匙加減。突然の休業もあるらしい)
この区画で唯一酒が飲めるバーだけあって、確かにとても騒がしい。
そして、このバーがこの区画で一番明るい場所でもある。
雰囲気もそうだが、物理的に明るい。
そもそもここの区画は他の区画と比べて、一日中だいたい暗い。
3日に1回、人工太陽の日に、日光浴をする以外はほぼ夜みたいなものだ。
しかしだ。
24時間明るくできる、ここの店。
たぶん結構潤っている。マスターが別の商売もしているとか何とか。
しかも、今のご時世にもかかわらず、言えば大体なんでも手に入る、らしい。
金があればの話だが。
まぁ、とにかく。
人間は日中に生きる生き物だ。
暗ければ、そりゃ光が恋しくなる。
たぶんこのバーにいる半分以上の人間が別に酒など飲んでいないのであろう。
そもそも酒自体も結構値が張る。需要と供給のバランスってやつだ。
ルカ「私と飲む?」
彼女はバーのスタッフの一人。
というか人間ではないらしい。バンパイアだったか。
薄暗いこの区画が好きで、暮らしているらしい。
ルカ「あなただいたい暇そうだよね。ね、私と協力して探求しない?」
彼女はバンパイアの中でも変わっている方らしく、こういった流行りの”謎”っぽい話が好きらしい。
妹もいるって言ってた気がする。そう言われたら会ってみたくなる・・という策略か?
いや、たぶん嘘ではないと思う。たぶん。
そして、彼女の言う”探求”・・つまり探求者のことがだが、
あいつも・・あっちのあいつもそう。スチームパンク調な格好をした連中。
たぶんマスターもそう。というかモロそんな格好をしている。
確か、昔いつの間にか発展していたインターネットの謎を解くべく、
インターネットを探っていた人たちを指したが、
今はというと、世界的に密かに流行っているコレクション「SteamPunkWhales」を追い求めている連中を指す。
データ自体に何か仕掛けがあるのか
ただのお飾りなのか・・
いまだに謎らしい。
ルカ「ブロックチェーンみたいよね。誰が作ったかわかんない感じ。」
たまに彼女は昔読んだという本の話を、現実の話みたく話す。
それがちょっと面白くて、気がつけば、いつの間にか一緒に飲んでいる自分がいる。
・・そんな金ほとんどないのに。
ここの看板娘は本当によく仕事のできるスタッフだ。
んで、
その「SteamPunkWhales」とは
広い深いインターネットの海から発見された、これまたスチームパンク調のKUJIRA。
この未知なる海にいるくじらの種類だけあるのだろうか・・
数も多く、集めるだけでも圧巻なうえ、人類未到のくじらまで発見されたとか。
そのせいか、中には恐ろしい額で取引されているものもあるとか。
こういった話は、バーにいるとちょこちょこ耳には入る。
娯楽が減った今、こういう謎が人類には必要なのだ。
人間の知識欲求がどうしても渇望してしまうらしい。
そりゃ、欲しいと思ったことがないと言ったら嘘となる。
というか2個持ってる。うん。
ルカ「やっぱり謎は美味しいよね。というかあなたが2個持ってるの、私知ってる。」
「だから声かけたの」
う・・やっぱりバレていたらしい。
きっと彼女は感覚デバイスをそれなりに所有しているのだろう。
確実に「視覚強化デバイス」は持っている。
「視覚強化デバイス」とは映像出力機がなくても、
目の前に映像出力機をバーチャルで出現させれらるもので、
もちろん、画像検索もできちゃう、マジの優れものだ。恐ろしく高価だけど。
そして、当たり前だが、データの所有者はネット上に、きちんと”所有者”として名が刻まれている。
どんな優秀なクラッカーも、これを改ざんできないらしい。
きっとこれが彼女のいう、ブロックチェーンなのであろう。多分。
当たり前にあるものが、なぜそうなのか・・
当たり前すぎて考えることなかったな、と不意に気付かされる。
ここの看板娘は本当によく仕事ができるスタッフだ。
ルカ「他の区画から来たあなただから、ここであまり取得できないデータ持っていると思ったんだ。」
客の素性もちゃんと把握している。本当によく仕事ができるスタッフだ。
ルカ「集めて圧巻・・だけだと思ってた?」
「ここだけの話ね。マスターにこっそり聞いたの・・聞く?」
これがここだけの話か、もちろんどうだかわからないが、聞かないという選択肢はない。
ルカ「KUJIRAに”新たなるデータを含有していることがわかった”んですって」
そんな話、全く聞いたことがない。
というか2つ持っているのに、そんなもの見たことがない。
何か仕掛けがあるのだろうか。それともぼったくる嘘?
ルカ「私もその辺りは全く仕組みはわからないのだけど・・
そのデータを見る方法・・意外と簡単なの。知りたい?」
それはもちろん気になる。
ルカ「10個所有したとき、突然現れるそうよ。」
・・?
それだけ?
ルカ「うん。それだけ。」
まじで簡単すぎる。
こんなに簡単なのに、全く聞いたことがないのは何故なんだろう。
・・・
あ、そういうことか。
ルカ「10個所有するなんて、かなーり・・だいーぶ・・とても難しいからね。」
確かに。
運よく2つ所有できたものの、周りに2つ以上持っている人なんていなかった。
あまり気にしてこなかったが、そういえばなんでなんだろう。
データは意外と多くの人にバラけているのか、どこかの誰かが全保有しているのか・・。
なのに、なぜ恐ろしい種類のデータがあるらしいという噂は聞くのだろう。
ルカ「私もマスター以外に10個持っている人見たことないの。」
しかし、そもそもなぜそんなこと教えてくれるんだろう。
これは見返りが怖いな。
ルカ「なんだかんだ君もこういうの好きそうだなって、それだけよ。長居しちゃった。またね!」
そう言ってテーブルを立つ彼女を、
つい引き止めてしまった。
”どんな”データが含まれていたのか、つい気になってしまった。
ルカ「ふふふ。やっぱり気になったでしょ。あ、けど私も仕事しないと・・」
ですよね。ビール1本よろしくお願いいたします。
ルカ「ありがと❤︎」
本当に・・本当によく仕事ができるスタッフだ。
ルカ「あ、その前に・・あなたの名前・・どう呼んでいいか教えてくれない?」
※ ATTENTION※
ルカがあなたの名前を尋ねています。ここで答えた”名前”が今後、主人公の名前として、この物語が終わるまで呼ばれることとなります。慎重にお答えください。
※なお、KUJIRAYAのフィルターに通らなかった場合はこの限りではございません。
※このミッションは終了しています※
名前は既に決定されました。エピソード002をどうぞお待ちください。
なぜかデータを保有している探求者にだけ、早期公開され、選択肢や回答が求められます。
全てには理由があるので、どうぞお暇な際に、ちょっとだけこの物語へ想いを馳せてください。
あなたの生活に”ちょっとだけ”ワクワクする廃坑的な冒険をお届けします。
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