episode006 -飲み物を売っているんじゃない、時間を提供しているんだ。-

あぁ・・だめだ。

このまま真っ直ぐ帰る気分でもないし、仕事のこと考える気持ちは皆無。

となると、
飲みでも行こうかな。ふわっと話せるあの場所へ。

お酒は好きだけど、それだけじゃない・・踏み込まなくて良い、踏み込まれない、
ほどよい距離感で癒される場所。

なんか小説であったな
「飲み物を売っているんじゃない、時間を提供しているんだ」って。
良き時間を提供されに行くとしよう。

そういえば・・そんな場所他にもあるのかな・
わかる範囲だと、Barくらいしか知らないな。他にあんのかな。

移住区から繁華街区へは暗い道が続く。
ちょうど中間あたり・・一層くらい。さすがにちょっとさみしい。
ちょっと何か見たい。

・・映像デバイスでもあれば・・なぁ。

・・窓でもあれば・・なぁ。
鉄の壁を眺めるより、深海を眺められるなら・・

あ、ダメか。

現実を目の前にしてしまうと、
きっと”この区画はいつ水圧に潰されるんだろう”って恐怖する人が必ず現れる。

この方100年、そんな事故は起こったことないらしいけど。
たまに揺れはするけど、陸上よりはるかに災害の影響は受けないとか・・

いやはや、本当この文明を築いてくれた偉人たちには感謝しかない。

しかしだ。

人類が陸上で生活していた時も、
”いつ死ぬかわからない”恐怖はあったと聞く。その時代と今の時代、一体どっちの方が恐怖なんだろうな。

今の陸上がどうなってるかなんて、ネットの情報からしか得ることができないから、

ちょっとだけ、陸地に憧れるロマンチストたちの気持ちはわからんでもない。
人の知的欲求は止まらないのだ。

「ふざけるな！！！お前・・お前らのせいなんだろ！」

ん？
なんか叫んでるやついんな・・・・

ここただでさえ酸素少ないのに、元気いっぱいだな。

「あの事件、どうせお前らなんだろ・・。なんでお前みたいな奴らがここにいんだよ！」

いちゃもんか？事件とかなんとか、物騒極まりないなぁ。。

結構野次馬もいるのかな。
ざわざわした音が反響して聞こえてくる。

・・・・

あれ・・・Barに向かうほど、声が近くなるような。。。

「どうせ人間なんて、食べ物くらいにしか思ってないんだろ？
だからあの場所で全員食ったんだろ？」

な・・なんの話！？！？怖いんだけど！？！？！

な・・何かのコンテンツ撮影？
今時、自らで演じて撮る人とか・・レトロな手法やっちゃう系？？

ざわつきが近くなる。

流石にこのざわつき・・数人じゃないだろう。
そんなチーム組んでレトロ撮影しているの、すごいな。

あ。。

Barの周りに人がいる。普段から客は多いから不思議じゃないけど・・
客というか遠巻きに見ている人が10・・20人はいるか？

撮影って雰囲気でもないな・・
ネットでしか知らないけど”レトロ撮影の方法”な感じでもない。

「あれお前なんだろ？！それかお前の身内なんだろ？？！！」

Barの客・・か？
（いやお店で叫びまくって、店機能させないヤツは客じゃないな）

遠巻きに近づいてみる。

ん・・？
ルカ？・・あれはルカに絡んでるのか？

「なぁ、聞こえてるならなんとか言えよ！どんだけ見つけるの大変だったと思ってるんだ」

熱狂的ファン・・？（違うか、剣幕がそれではないな）

「俺には・・あいつだけだったんだ。。あいつがあんな死に方するわけな・・ないんだよ」

そんな物騒な事件、最近あったか・・？

「お前らなら・・殺しても・・戻せるんだろ？なあ・・返してくれよ・・なあ！！！」

あ。

あぁ・・

そういうことか。
この区画じゃなかったはずだが・・

「調査隊員６人失踪。潜水艦だけ残し」

秘密裏に調査していたのか、本当に情報がなく、事件としては解決していなかったはず・・
潜水員に何かあった時に作動するカメラの捉えた映像が・・オフラインで扱われる機密情報とかっていうやつが・・なぜか出回ってて・・それが結構エグくて・・
そのせいか、バンパイアが犯人じゃないのかって結構荒れてたやつだ。

あの調査隊員のご家族かな。
あ・・ルカ・・すっごい剣幕。

やっぱりバンパイアって話も本当だったんだな。。